韓国の税務・会計資料

韓国の税務・会計資料

  • > home - 韓国の税務・会計資料

May 29, 2025
by swacc

相続税の課税体系改編案

続税の課体系改編案


 韓国企画財政省は3月19 日付で相続税課税体系の全面改編のための遺産取得税導入関連税法改正案を公開した。1950 年に導入された相続税および贈与税法は、これまで多くの改正があったが、遺産税方式は維持された。今回の改正案は、従来の相続税や贈与税の根幹だった遺産税方式を、遺産取得税方式に見直すというものだ。


 既存の相続税の課税方式だった遺産税方式は、被相続人、すなわち相続をする人が残した全体財産を基準に相続税額を計算し、この税額を相続人、すなわち相続財産を受け取る人の相続比率によって分けて負担する方式だ。相続税は累進税率を適用しているため、相続財産が多くなるほど税負担が急激に増える。一方、遺産取得税は被相続人が残した全体財産を基準に相続税を計算する方式ではなく、それぞれの相続人が相続を受けた財産(相続取得財産)を基準に相続税を計算する方式だ。したがって相続人が実際に相続された財産を基準に税率を適用することになるので、課税公平性が向上すると言える。


 既存の遺産税方式では被相続人が居住者である場合、国内外のすべての相続財産が課税対象になり、被相続人が非居住者である場合には国内所在財産だけが課税対象になった。しかし、遺産取得税方式では、被相続人が非居住者である場合にも相続人が居住者である場合には、国内外のすべての相続取得財産が課税対象になるという点に留意しなければならない。ただし、短期居住外国人(以前の10 年間、5年以下の国内に滞在した場合)は例外的に相続税法上の非居住者と見なし、国内所在の相続取得財産に対してのみ課税対象とする。


 相続控除制度も大幅に改正される。現行法によると、相続が開始されれば、誰でも控除を受けられる基礎控除2億ウォン(約1,970 万円)と子供1人当たり5,000万ウォン、年老いた人に対しては5,000 万ウォンなどの控除金額の合計額と5億ウォンの一括控除のうち大きな金額を控除してもらえる。改編案によると、直系尊卑属である相続人はそれぞれ5億ウォンの基本控除を受けられるようになる。すなわち、10 億ウォンの相続財産を2人の相続人に5億ウォンずつ相続する場合、現行の税法によると、5億ウォンの一括控除のみ適用され、差引額5億ウォンに対しては相続税を負担しなければならない。しかし、改正案によると、1人当たり5億ウォンの基本控除を適用することになり、負担する相続税額はなくなる。配偶者控除の範囲も拡大される。現行の配偶者控除は、法定相続分と30 億ウォンの限度を適用しているが、改正案によると、法定相続分が10 億ウォン未満の場合、10 億ウォン限度まで控除することで、その範囲が拡大した。しかし最近、与党が配偶者相続税免除法案を発議する予定だとしており、野党でも賛成を示しており、配偶者に対する相続税課税は廃止されるものとみられる。


 50 年に制定され、多くの改正を経て現行の税率が適用され始めたのは97 年で、28 年以前の税率構造がまだ続いているのだ。これまで国家の経済規模と所得水準の上昇、物価上昇率、不動産価格の上昇などによる貨幣価値の下落などを考慮すれば、一般国民が体感する相続税は相当負担になったのは事実だ。相続税負担緩和法案は、金持ちに対する特恵という視線があるのも事実であり、ソウルで住宅1軒を持っている平凡な市民も相続税課税対象になるというのも事実だ。与野党間で相続税法改正案の議論と合意が必要な時期だ。


<筆者紹介>
信和会計法人は、2003年設立され、韓国進出を目指している企業、または進出済みの日本企業向けに、法人の設立に関するご相談及び設立代行、会計、税務、給与サービス、支給代行サービス、会計監査、デューデリジェンス(Due Diligence)サービス等を提供しております。大手会計法人の日本事業部出身のベテラン会計士を中心に設立され、豊富な経験とノウハウを活かし日系企業のクライアント様に最善のサービスを提供しております。
今回の担当:張太日(チャン・テイル)公認会計士(韓国)。英和会計法人(現在、Ernst&Young韓英会計法人)にて勤務。日本太田昭和監査法人(現在、新日本有限責任監査法人)にて派遣勤務。現在は信和会計法人の国際部代表。(TEL: 02-555-9211/E-mail: tichang@swacc.com)


<出典:NNA ASIA アジア経済ニュース、2025.4.10 https://www.nna.jp/>



  • List