韓国の税務・会計資料

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November 11, 2022
by swacc

中小企業の会計負担軽減

中小企業の計負担



 2018年会計改革により、これまで会計監査人指定、連結対象企業拡大、内部会計管理制度義務化など多くの中小企業に少なからぬ負担を与えた会計関連制度が市場親和的な政府が発足し緩和され始めた。21年末基準で外部監査対象企業は計3万3,250社であり、このうち資産5,000億ウォン(約530億円)未満の非上場中小企業が占める割合は90.4%(3万71社)で非常に高い水準だ。 また、全体上場企業(2,281社)のうち、資産1,000億ウォン未満の小規模上場企業の割合は33.6%(768社)で、大半がコスダック上場企業だ。このように外部会計監査を受ける企業の90%以上が中小企業であり、上場企業のうち33%は資産1,000億ウォンにも満たない小規模企業で構成されており、会計改革によって大幅に増加した会計関連管理業務と大幅に引き上げられた会計監査費用で多くの小規模企業が相当な負担を感じていたのも事実だ。これに対し金融委員会は10月6日、中小企業の会計負担を緩和する方案を発表した。


 まず、非上場中小企業の連結財務諸表適用範囲を大幅に縮小した。非上場企業が一般的に適用するK-GAAPによると、22会計年度からは全ての従属会社が連結対象になり、多くの中小企業が連結財務諸表を作成し、会計監査を受けなければならなかった。しかし、今回のK-GAAPを改正する方法を通じて利害関係者が少ない一般非上場企業の場合、連結財務諸表作成対象となる従属会社の範囲を外部監査法による監査対象となる従属会社に限定し、小規模従属会社の場合には連結財務諸表の作成対象に含まなくても良いよう改正した。法律を改正する事項ではなく、改善方案として今年から直ちに適用することになるので、多くの非上場中小企業が恩恵を受けることができるものと予想される。


 次に、外部監査法6条6項によると、外部監査人は監査対象会社の財務諸表作成に関する会計処理に対する諮問に応じることができないようになっている。したがって処罰を憂慮した監査人たちが企業と意見交換を敬遠しており、企業と監査人間の意見交換が円滑に行われない実務的な問題が明らかになり、企業の不満が多く提起された。これに対して金融委員会は、企業が提示した会計処理内容に対する具体的見解を表示することは許容し、監査人が財務諸表作成に直接介入することは禁止するなどの原則と関連した事例集を発刊し、企業の質疑に事前に非措置意見書を出すなど意見交換を活性化するというが、その効果は未知数だと言える。


 今年までは資産1,000億ウォン以上の上場会社が内部会計管理制度に対する外部監査を受けなければならなかった。しかし、来年からは資産1,000億ウォン未満の上場企業まで内部会計管理制度に対する外部監査が義務付けられる。しかし、小規模上場企業の場合、取引規模が小さく事業構造が単純で内部会計管理制度に対する監査費用が便益を超過するという指摘が多い。政府はこれを反映して資産1,000億未満の企業の場合、内部会計管理制度に対する外部監査義務免除を推進しようとするが、外部監査法の改正が必要な事項であるため、国会で法が通過するのを待たなければならない。


 現行資産1,000億ウォン以上の非上場会社は外部監査法上、大型非上場会社に該当し上場会社に準じて内部会計管理制度構築·運営義務、監査人選任委員会設置義務などの厳格な会計規律が適用されている。これに該当する大型非上場会社は3,841社に達する。 政府の改善案によると、非上場大企業の基準を資産5,000億ウォン以上に上方修正し、非上場大企業の数を中小企業基本法水準である800社余りに減らそうとしている。ただ、改善案によると、事業報告書を提出しなければならない会社や大企業集団に属する会社は、この対象に含まれない。この改善案は施行令の改正で可能な事項で、近いうちに施行されるものと予想される。


 その他、現行の会計監査時に適用している国際監査基準は、大手上場会社を基準に設計されており、小規模会社には適していないという問題を抱えている。これに対し金融委員会は小規模非上場企業(資産200億ウォン未満または売り上げ100億ウォン未満、1万2,887社)に対しては国際監査基準委員会で推進中の小規模非上場企業向け監査基準を早期適用するよう推進しており、近いうちに適用されるものと予想される。


 今回の改善案を見ると、企業が主張し続けてきた監査人指定制に対する改善案は含まれていないが、企業側では引き続き主張するものと予想されるため、監査人指定制度がどのような形で妥協案を見いだすのか、引き続き注目する必要がありそうだ。


<筆者紹介>
信和会計法人は、2003年設立され、韓国進出を目指している企業、または進出済みの日本企業向けに、法人の設立に関するご相談及び設立代行、会計、税務、給与サービス、支給代行サービス、会計監査、デューデリジェンス(Due Diligence)サービス等を提供しております。大手会計法人の日本事業部出身のベテラン会計士を中心に設立され、豊富な経験とノウハウを活かし日系企業のクライアント様に最善のサービスを提供しております。
今回の担当:張太日(チャン・テイル)公認会計士(韓国)。英和会計法人(現在、Ernst&Young韓英会計法人)にて勤務。日本太田昭和監査法人(現在、新日本有限責任監査法人)にて派遣勤務。現在は信和会計法人の国際部代表。(TEL: 02-555-9211/E-mail: tichang@swacc.com)


<出典:NNA ASIA アジア経済ニュース、2022.11.10 https://www.nna.jp/>



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