韓国の税務・会計資料

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August 26, 2022
by swacc

2022年税制改編案

2022年税制改編案


 韓国企画財政省は7月21 日に「2022 年税制改編案」を発表した。その内容は法人税率引き下げ、繰越欠損金控除限度の引き上げなどを中心とした経済活力向上、歪曲された不動産税制の正常化、グローバル最低限税導入などをその主な改正方向としている。ここでは税制改編案の中で目立つ内容について簡単にその内容を調べることにする。


 まず、法人税率が最高25%から22%に引き下げられる。そして課税標準区間が単純化される。現行の一般企業の場合、課税標準2億ウォンまでは税率10%、200 億ウォン(約2,070 万円)までは税率20%、3,000 億ウォンまでは22%、3,000 億ウォン超過分に対しては25%の税率で課税されてきたが、改正案によると課税標準区間が単純になる。一般企業の場合は課税標準200 億ウォンまでは20%、200 億ウォン超過分に対しては22%の2区間に単純化される。中小・中堅企業(売上高3,000 億ウォン未満)の場合は課税標準5億ウォンまで10%の特例税率を認めるため、中小・中堅企業の場合は例外的に課税標準区間が課税標準5億ウォンまで10%、5億ウォンから200 億ウォンまでは20%、200 億ウォン超過は22%の3段階で税率を適用することになる。中小および中堅企業では、より多くの企業が低い税率を適用できるものと期待される。


 最近の新型コロナウイルス禍によって欠損企業が増えている状況を反映し、一般企業の繰越欠損金控除限度が増える。現行税法の下では、繰り越された欠損金は、該当事業年度所得の60%(中小企業100%)を限度に控除しているが、改正案によると、現行60%の控除率を80%までに上方修正する。コロナ禍が終わって企業の実績が良くなれば、多くの企業が実質的な恩恵を受けることができるだろう。


 海外優秀人材の誘致および長期勤務誘導のため、外国人労働者の単一税率特例適用期間(国内勤務開始日から5年間)の制限を廃止する。すなわち、外国人勤労者の場合、総合所得税率(6~45%)と単一税率(19%、非課税・減免は未適用)の中で本人に有利な税率を5年間だけ選択適用可能だったが、5年制限を廃止し継続的に特例を適用できるようにする また、エンジニアリング技術提供者などの外国人技術者に対しては5年間所得税の50%を減免してきたが、その期間を10 年に延長する。また、外国で勤務している内国人が国内に復帰する場合も、所得税減免期間を5年から10 年に延長する。


 経済のデジタル化にともなう多国籍企業の租税回避など問題解決のために全世界的な合意を経て施行することにしたグローバル最低限税が導入される。韓国政府では今回の通常国会で国際租税調整に関する法律を改正し、グローバル最低限税を導入する予定だが、その施行時期は2024 年にしている。グローバル最低限税は、多国籍企業の所得に対して特定国家で最低限税率(15%)より低い実効税率を適用する場合、他の国に追加課税権を付与する制度だ。すなわち、海外子会社が低税率により課税される場合には、親会社が追加税額を親会社所在地国家に納付(所得算入規則)しなければならず、親会社所在地国で所得算入規則を未適用時には海外子会社が追加税額を子会社所在地国に納付(所得算入補完規則)することがその骨子である。適用対象企業は直前の4事業年度のうち、2年度以上の連結財務諸表上の売上高が7億5,000 万ユーロ(約1,033 億5,200 万円)以上の多国籍企業グループだ。売上高が7億5,000 万ユーロを超過する企業群は、最終親企業、中間親企業、部分所有親企業、子会社も場合によってはグローバル最低限税納付義務者になりうるので、事前検討と準備が必要だろう。


 その他の改正事項として、コロナ禍による免税店業界の経営悪化や国民所得の増加など経済的条件の変化を考慮し、旅行者携帯品の免税品限度が上方修正される。従来は基本600 米ドル(約8万1,000 円)+酒1本(1リットル、400米ドル以下)・タバコ200 本・香水60 ミリリットルが免税限度だったが、新しい基準によるとタバコ・香水は現行と同じだが、基本限度が800 米ドルに増え、酒も2本(2リットル、400 米ドル以下)まで免税で搬入できるようになる。また、接待費の名称が変更される。接待費も企業の業務のために使われる費用ではあるが、既存の否定的イメージが強いので接待費の名称を24 年からは「業務推進費」に変更する。税法上、限度は現行と同様に適用する予定だ。政府が先月発表した税制改編案は実際に通常国会で修正される可能性もあるので引き続き注意を払うようにしよう。


<筆者紹介>
信和会計法人は、2003年設立され、韓国進出を目指している企業、または進出済みの日本企業向けに、法人の設立に関するご相談及び設立代行、会計、税務、給与サービス、支給代行サービス、会計監査、デューデリジェンス(Due Diligence)サービス等を提供しております。大手会計法人の日本事業部出身のベテラン会計士を中心に設立され、豊富な経験とノウハウを活かし日系企業のクライアント様に最善のサービスを提供しております。
今回の担当:張太日(チャン・テイル)公認会計士(韓国)。英和会計法人(現在、Ernst&Young韓英会計法人)にて勤務。日本太田昭和監査法人(現在、新日本有限責任監査法人)にて派遣勤務。現在は信和会計法人の国際部代表。(TEL: 02-555-9211/E-mail: tichang@swacc.com)


<出典:NNA ASIA アジア経済ニュース、2022.8.11 https://www.nna.jp/>



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