韓国の税務・会計資料

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August 26, 2022
by swacc

会計監査の効用性と指定監査制

会計監査効用性指定監査制


  最近では、前回言及したOsstemImplantとKeyangElectricMachinery、横領事件の他にも、多くの横領事件が新聞やテレビを通じてよく報道されている。 Woori銀行の横領事件は614億ウォン(約63億5,200万円)に達し、化粧品会社であるAmore Pacificでは30億ウォン、また別の化粧品会社のCLIOでも22億ウォン、通信会社LGUplusでも約40億ウォン、Saemaul金庫でも40億ウォンに達する横領ニュースが引き続き報道されている。 現行の会計監査制度に何か問題点があるのではないかという疑問点を持たせるニュースだ。


 現行会計監査制度は2016年頃の大宇造船海洋の大規模粉飾会計事件を契機に会計監査関連法律が改正され、19年から施行された会計改革の一環として施行された制度だ。 主な骨子は監査人の独立性強化と監査業務の品質強化、企業の内部統制強化、そして責任強化といえる。 これにより、現行の会計監査制度の根幹である監査人指定制と内部会計管理制度の監査が導入された。 新たに施行された制度について評価するにはあまりにもその施行期間が短いが、企業側では経済人団体などを通じて引き続き指定監査制に対する不満を提起しており、今回変わった新政府にも規制撤廃の一環として監査人指定制廃止を建議した。


 会計監査の効用性に対する疑問に対しては、会計監査が粉飾、横領などの会計不正をすべて摘発できるという誤解から解かなければならない。 もちろん、会計監査を遂行する途中、ほとんどの会計不正は摘発できる。 しかし、財務諸表は会社が作成することであり、監査人は会社がだまさず財務諸表を作成したという前提の下で標本監査を遂行するので、会計監査ですべての会計不正を摘発できるわけではないということを理解しなければならない。 会社がだますという前提で実施する会計監査は、投入時間と費用面で莫大(ばくだい)な非効率をもたらすに違いない。 会計監査の前の財務諸表の作成の段階で会社が意図をもって粉飾決算をすれば、会計監査時に100%摘発することは難しい。このように会計監査は、すべての不正を摘発することはできないという限界は持っているが、会計不正の摘発に相当の機能をしている。また、会計監査が不特定多数の投資家が投資意思決定をする現代の金融市場で、企業が作成した財務諸表に一定水準の信頼性を付与し、金融市場を動かせる1つの主要要因であるという事実だけは変わらない。


 監査人指定制に対する不満は、制度導入初期から提起されている。 約40年前の1980年代までは会計監査は指定監査制だった。 企業は政府が指定した監査法人から会計監査を受けなければならなかった。 しかし、その後、経済規模が大きくなり、国際化が拡大し、市場で自由な経済活動に対する要求が増えたことを受け、指定監査制を廃止し、自由受任制を導入した。 経済に国家の影響力が強かった時代に施行されたが廃止された指定監査制を改めて監査人の独立性確保のために再び導入したということは何か問題があるように見える。 しかし、会計制度改革法の導入当時は、大宇造船海洋の粉飾会計事件があまりにも衝撃が大きかったため、企業が不満を提起できる社会的雰囲気ではなかっただろう。


 監査人指定制を導入して監査人の独立性を確保すれば、会計不正を摘発して報告するだろうという仮定は、ある程度効果があるだろう。しかし、上述の会計監査はその属性と基本仮定により限界がある。 独立性があっても、すべての会計不正を摘発できるわけではない。 また、会計監査人が会計不正を摘発しても、次の受注のために報告をしない場合もありうる。 これは深刻な問題である。 もちろん判断の問題もあるだろう。このような場合には監査人指定制が会計不正の摘発と報告に一定効果はあるだろう。 しかし、一律ではないだろう。 すべての会社が会計不正を犯すわけでもなく、会計不正を発見したすべての会計士が会計不正を見逃したふりをすることはないだろう。 上場法人の会計開示資料の信頼性を向上させることは公共の利益に符合すると言うだろうが、だからといってすべての上場法人に監査人を指定するのは無理があるようだ。監査人の独立性確保策は一律の監査人指定以外にも一部指定制を導入して監査人指定範囲を拡大し、一定基準に達しない会社に対して監査人を指定する方法、 企業と監査人に対する強力な責任賦課などのいろいろな方法があるだろう。 一部企業の粉飾会計によってすべての企業に監査人を指定することは、市場経済制度に反する制度であり、国際規範にも合わないようだ。 監査人の独立性確保も重要だが、それ以前に財務諸表を作成する企業が適正に財務諸表を作成できる法的、経済的環境を作ることがより重要だと見られる。


<筆者紹介>
信和会計法人は、2003年設立され、韓国進出を目指している企業、または進出済みの日本企業向けに、法人の設立に関するご相談及び設立代行、会計、税務、給与サービス、支給代行サービス、会計監査、デューデリジェンス(Due Diligence)サービス等を提供しております。大手会計法人の日本事業部出身のベテラン会計士を中心に設立され、豊富な経験とノウハウを活かし日系企業のクライアント様に最善のサービスを提供しております。
今回の担当:張太日(チャン・テイル)公認会計士(韓国)。英和会計法人(現在、Ernst&Young韓英会計法人)にて勤務。日本太田昭和監査法人(現在、新日本有限責任監査法人)にて派遣勤務。現在は信和会計法人の国際部代表。(TEL: 02-555-9211/E-mail: tichang@swacc.com)


<出典:NNA ASIA アジア経済ニュース、2022.7.7 https://www.nna.jp/>



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