韓国の税務・会計資料

韓国の税務・会計資料

  • > home - 韓国の税務・会計資料

May 16, 2022
by swacc

多国籍企業の隱匿固定事業場の税務調査

多国籍企業の隱匿固定事業場の税務調査




 韓国国税庁の法人税申告現況を見ると、2019 年には1万630 社の外資系企業(外国法人、外国人投資法人を含む)が法人税申告を行い、20 年には1万449 社の外資系企業が法人税申告を行うなど、毎年1万社の外資系企業が法人税申告を行っている。しかし、外国法人が国内に固定事業場を有していなかったり、収益事業を営まなかったりする場合には法人税納税義務がなく、この統計に含まれていない。固定事業場とは、企業の事業が全面的にまたは部分的に遂行される事業場所をいう。一般に支店、工場などのの物理的場所を置いて営業活動を行う場合を言い、鉱山、油田、建築現場のような場所も固定事業場に含まれる。ただし、倉庫、展示場または企業のための予備的または補助的性格の活動のみを行う所は、固定事業場に含まない。


 すなわち、子会社、合弁会社の形態で韓国で営業活動を行っている場合には、内国法人で当然、法人税納税義務があり、支店の形態で営業活動をしている場合には外国法人として国内に固定事業場を置いたこととなり、国内源泉所得に対して法人税納税義務があるのである。しかし、営業活動を行っていない連絡事務所の形で活動している場合は、国内に固定事業場を設けていないこととみなされるため、国内で法人税納付義務は発生しない。


 多国籍企業の中ではグローバル税負担を減らすため、移転価格などを利用して租税回避を試みる場合があり、固定事業場を隠匿する場合も多いという。国税庁は最近、多国籍企業の攻撃的租税回避に対応するためBEPSプロジェクトの推進、デジタル税(Digital Tax、別名「グーグル税」)の導入議論などさまざまな努力を傾けている。国税庁では攻撃的租税回避への対応の一環として半導体、物流、装備など一部好況業種を中心に隠匿固定事業場の有無を集中的に点検し、脱税が確認された13 企業に対して税務調査に着手したと発表した。国税庁では、外国本社が国内子会社を通じて実質的に国内事業を支配・統制(固定事業場に該当)していながらも、国内子会社と本社との形式的契約を通じて、国内子会社が単純業務支援の用役だけを提供するように偽装した外国企業を固定事業場を隠ぺいしたものとみて、税務調査に着手した事例を発表した。すなわち、国内事業場が実質的に国内事業を主導しながらも、国内事業の主な契約は国内の企業と外国の本社間で締結し、国内事業場は補助的業務を遂行する連絡事務所として登録をする場合とか、または国内に子会社または支店のような固定事業場を登録しながらも、主な収益は外国の本社に帰属させ、国内事業所には単純支援委託対価として一部の収益のみを帰属させる場合がこれに該当すると考えられる。


 上記の国税庁が発表した事例を見ると、意図しない場合でも国内事業場を隠蔽して運用する外資系企業に該当する場合もあると考えられる。結局、国内の固定事業場が国内の源泉所得発生にどの程度の役割を果たしているかを随時検討し、役割にふさわしい収益を配分しなければならない。固定事業場に該当しない連絡事務所が国内収入に一定の役割を果たす場合には、事業スキームを見直すべきであり、支店や子会社の場合にも役割に応じた収益配分を毎年見直す必要があると考えられる。最近の世界的なデジタル税導入など、多国籍企業に対する課税強化の動きの中で、過去のどんぶり勘定式の国際取引方式はもはや通用することは難しそうだ。


<筆者紹介>
信和会計法人は、2003年設立され、韓国進出を目指している企業、または進出済みの日本企業向けに、法人の設立に関するご相談及び設立代行、会計、税務、給与サービス、支給代行サービス、会計監査、デューデリジェンス(Due Diligence)サービス等を提供しております。大手会計法人の日本事業部出身のベテラン会計士を中心に設立され、豊富な経験とノウハウを活かし日系企業のクライアント様に最善のサービスを提供しております。
今回の担当:張太日(チャン・テイル)公認会計士(韓国)。英和会計法人(現在、Ernst&Young韓英会計法人)にて勤務。日本太田昭和監査法人(現在、新日本有限責任監査法人)にて派遣勤務。現在は信和会計法人の国際部代表。(TEL: 02-555-9211/E-mail: tichang@swacc.com)


<出典:NNA ASIA アジア経済ニュース、2022.4 https://www.nna.jp/>



  • List