韓国の税務・会計資料

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May 16, 2022
by swacc

標準監査時間の改定

標準監査時間の改定




 韓国公認会計士会は1月13 日、2022 事業年度から適用される標準監査時間を改定公表した。標準監査時間は15 年、大宇造船海洋の粉飾会計事件をきっかけに17 年改正された新外部監査法に基づき、18 年から導入された。この時導入された標準監査時間制が、周期的な指定監査制、内部会計管理制度の強化とともに会計改革の重要な軸を担っている。標準監査時間制は、韓国公認会計士会で標準監査時間を決め、利害関係者の意見を反映して3年ごとに妥当性を再検討するようになっており、今回改正したものだ。


 新外部監査法の施行で、国際的な会計信認度の向上など会計の透明性が高まったというのが一般的な評価だ。しかし、新外部監査法の施行後、監査報酬が急激に増加し、中小企業を筆頭に多くの企業が不満を吐露している。この監査報酬の増加には、標準監査時間制の機械的適用による報酬算定が大きな要因を占めている。改正規定によると、今後、標準監査時間は一律的に適用されず、企業の個別特性や固有環境を考慮して算定される。従来、標準監査時間を「監査人が会計監査基準を忠実に順守し適正な監査品質を維持するために投入すべき時間」と定義している。しかし、改正規定によれば、多様な特性を持った企業に対して一律に標準監査時間を適用せず、企業の個別特性と環境を考慮して標準監査時間を算定できるようにした。


 また、以前は標準監査時間の40%を内部会計管理制度監査の標準監査時間として加算し、内部会計管理制度監査が初めて実施される事業年度とその次の事業年度にはそれぞれ30%と35%を加算できるように規定していたが、改正規定ではこのような加算率を削除して会社の個別特性を反映して標準監査時間を算定できるようにした。


 さらに、標準監査時間の上限と下限規定も削除した。直前の事業年度監査時間の150%を上限とし、100%を下限としているが、改正規定ではこの規定を削除している。また、従来は企業を資産規模に応じて10 グループに分け、標準監査時間の適用率を異なって維持しているが、近年の新型コロナウィルス感染症による企業の困難を考慮し、22 年度の段階的適用率は21 年度と同様に維持した。


 標準監査時間の加減要因は、(1)上場企業と(2)コネックスおよび非上場企業に区分され、簡素化される。規定によると、連結子会社数、危険勘定の比重、米国上場の可否、初度監査の有無などの基準によって、グループに属している企業別に加減率を別に適用している。既存の規定は、グループ1からグループ10 まで、グループ別に加減要因と加減率を別々に適用しているが、改正規定は、加減要因と加減率を上場会社(グループ1~グループ6)とコネックスおよび非上場会社(グループ7~グループ10)の2つに区分して加減率を同一に適用し、標準監査時間の算定を単純に調整している。


 新外部監査法が施行されてから3年が経過した。これまで、この会計改革法が企業の透明性を改善する上で役割を果たすということには多くの人が同意しているが、施行過程で会計監査報酬の増加、企業監査担当部署の負担増加、中小企業の会計担当人員の不足、公認会計士の補充問題などの問題点もかなり露呈した。今回の標準監査時間の改正で一定部分の改善効果はあるものと予想されるが、会計改革制度が完全に定着するまでは見守らなければならないだろう。


<筆者紹介>
信和会計法人は、2003年設立され、韓国進出を目指している企業、または進出済みの日本企業向けに、法人の設立に関するご相談及び設立代行、会計、税務、給与サービス、支給代行サービス、会計監査、デューデリジェンス(Due Diligence)サービス等を提供しております。大手会計法人の日本事業部出身のベテラン会計士を中心に設立され、豊富な経験とノウハウを活かし日系企業のクライアント様に最善のサービスを提供しております。
今回の担当:張太日(チャン・テイル)公認会計士(韓国)。英和会計法人(現在、Ernst&Young韓英会計法人)にて勤務。日本太田昭和監査法人(現在、新日本有限責任監査法人)にて派遣勤務。現在は信和会計法人の国際部代表。(TEL: 02-555-9211/E-mail: tichang@swacc.com)


<出典:NNA ASIA アジア経済ニュース、2022.2.10 https://www.nna.jp/>



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