韓国の税務・会計資料

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November 30, 2021
by swacc

中小企業向け融資の満期延長•返済猶予措置の追加延長

小商工人と中小企業向け融資の満期延長·返済猶予措置の追加延長



 新型コロナウイルス感染症の拡大が深刻な中、政府は9月16 日付で小商工人(小規模事業者)と中小企業向け融資の満期延長・償還猶予措置を来年3月31 日までさらに半年延長することを決めた。


 このような金融支援措置は、2020 年4月に施行されて延長を続けてきたが、9月30 日に期限満了となり、さらに中小企業向け融資の満期延長と償還猶予措置をさらに半年間延長することにしたものである。


 金融委員会の資料によると、21 年7月末の全ての金融機関で満期を延長したり、返済を猶予した融資の残高は計121 兆ウォン(約11 兆5,000 億円)で、うち中小法人・個人事業者向けが1,243 兆ウォン(21 年6月末時点)と、約10%を占める。満期延長・返済猶予の支援を受けている事業者は48 万人(重複含む)に達する。


 このうち、比較的リスクが高いとみられる利子償還猶予を受けている債権の残高は5兆2,000 億ウォン、利子支援金額は2,097 億ウォンと、依然として金融機関が耐えられる水準にみえるが、コロナ禍の長期化により小規模事業者・中小企業の債務償還能力が低下し続けているため、融資の満期延長・償還猶予措置が終わると、不良債権問題が一時的に表面化する恐れがある。


 当局では、満期延長・償還猶予貸付残高のうち、危険性の評価が「固定」以下の与信比率が1.4%(1兆7,000 億ウォン)であり、関連引当金を十分積み立てていると発表しているが、融資の満期延長、償還猶予などにより「隠れ不良債権」が存在する可能性があるとみられる。


 金融機関は保有資産の健全性を引き続き評価しなければならない。すなわち、貸付債権を「正常」「要注意」「固定」「回収疑問」「推定損失」の5つに区分して危険性を評価し、これによって貸倒引当金を設定しなければならないのである。


 資産健全性分類基準によると、延滞が3カ月以上、休・廃業など債権回収に相当なリスクが発生したと判断される与信は固定以下と評価し、貸倒引当金を十分に積み立てなければならない。


 しかし、各金融機関は中小企業向け融資の満期延長や返済猶予で、中小企業の返済能力を評価するチャンスを逃している。金融委員会の資料を見れば、明らかに不良債権といえる利息返済猶予債権を除き、「隠れ不良債権」とみられる満期延長や、元本返済猶予を受けている融資金の残高は115 兆ウォンに上る。


 現在、満期延長と返済猶予措置が引き続き延長されており、この115 兆ウォンの貸し出しに対して正常な健全性評価が難しい状況とみられる。


 当局では貸倒引当金の設定率が155%水準と発表しているが、満期延長の返済猶予措置が終了し、正常に資産健全性分類をすれば、不良債権がさらに明らかになる可能性もある。


 コロナ禍が続いている状況で、小規模事業者に対する融資の満期延長などの金融支援は避けられないものとみられる。しかし、近いうちにコロナ禍は終息し、経済環境が正常に戻る時に、それまで隠れていた不良債権が明らかになる可能性がある。


 コロナ禍と景気低迷により世界的に低金利が維持され、流動性供給が大規模に行われ、不動産や株式など資産価格にもバブルが生じており、インフレの懸念があるのも事実である。


 近いうちに流動性供給が縮小し、制限的ではあるが利子率が引き上げられれば、資産バブルははじけ、家計負債問題も発生するだろう。


 これは中小企業向け融資の満期延長や返済猶予融資の不良化のリスクよりも、金融市場に大きな衝撃を与える可能性がある。家計負債問題、企業経営環境の改善問題など、全般的な対策が必要な時と見られる。




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筆者紹介>
信和会計法人は、2003年設立され、韓国進出を目指している企業、または進出済みの日本企業向けに、法人の設立に関するご相談及び設立代行、会計、税務、給与サービス、支給代行サービス、会計監査、デューデリジェンス(Due Diligence)サービス等を提供しております。大手会計法人の日本事業部出身のベテラン会計士を中心に設立され、豊富な経験とノウハウを活かし日系企業のクライアント様に最善のサービスを提供しております。
今回の担当:張太日(チャン・テイル)公認会計士(韓国)。英和会計法人(現在、Ernst&Young韓英会計法人)にて勤務。日本太田昭和監査法人(現在、新日本有限責任監査法人)にて派遣勤務。現在は信和会計法人の国際部代表。(TEL: 02-555-9211/E-mail: tichang@swacc.com)


<出典:NNA ASIA アジア経済ニュース、2021.10.14 https://www.nna.jp/>



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