韓国の税務・会計資料

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October 29, 2021
by swacc

2021年度の主要税法改正案

2021年度の主要税法改正案



 企画財政部が7月27日、税法改正案を発表した。今回の税法改正案を見ると、主眼点が経済回復と公正基盤化にあると言える。 前回は国際租税関連改正案を中心に主要改正条項を検討してみたが、今回は経済回復案と関連する主要税法改正案を検討することにしよう。


 1)まず、経済回復支援のための税法改正案を見ると、研究開発(R&D)活動に対する税制支援を大幅に強化した。 現行のR&D支援は、一般技術と源泉技術投資の2段階区分によって税額控除率を異にしているものの、改正案によると、「国家戦略技術」という新しいカテゴリーを作り、既存の税額控除率より最高10%の税額控除を追加で認めるようにしている。


 新しいカテゴリーに入る技術としては、15 ナノ(ナノは10 億分の1)メートル以下のDRAM技術、170段以上のNAND型フラッシュメモリー技術などの先端半導体技術のほか、リチウム2次電池や固体電解質などの2次電池技術やワクチン開発・試験・製造技術などが含まれる。


 2)無形資産である知的財産(IP)取得に対する投資税額控除を認めている。 既存の投資税額控除は機械装置など事業用有形資産中心の控除制度だったが、その投資税額控除対象資産を中小、中堅企業が取得する知的財産まで拡大している。 また、中小・中堅企業の技術移転または技術貸与所得に対しても所得減免および税額減免を2年間追加延長し、供給面での支援も継続している。


 3)創業中小企業およびベンチャー企業の支援対象を拡大し、また適用期限も延長した。コロナ状況で創業する企業の税額減免基準を収入金額4,800 万ウォン(約453 万円)から8,000 万ウォンに拡大し、税額減免期限も24 年まで3年間延長した。ベンチャー企業の株式買収選択権課税の特例もその対象を子会社の役員にまで拡大し、その適用期限も3年延長するなど、創業中小企業とベンチャー企業への支援を拡大延長している。


 4)雇用創出と雇用維持のための税制支援も拡大・延長している。常時労働者の増加時、増加人数1人当たり2年から3年間、400 万ウォンから1,200 万ウォンまでの税額控除を認める雇用増大税額控除を3年間延長し、若年層と障害者の雇用増加時、追加で100 万ウォンを控除するようにその範囲も拡大した。


 また、経歴断絶女性の雇用時、税額控除要件も経歴断絶期間3年から2年に緩和し、中小企業が常時労働者の増加時、増加人員に対する社会保険料税額控除、正規職転換に対する税額控除、雇用維持に対する税額控除もその範囲が拡大調整され、適用期限も延長された。


 5)内需活性化のために海外進出企業の国内復帰の際、5年間所得の50%から100%まで税額減免をしているが、減免要件は海外事業場の閉鎖後1年以内に復帰するようになっていた。しかし、今回の改正で海外事業所閉鎖後、2年以内の復帰とその要件が緩和され、適用期間も24 年まで3年間延長された。また、配信サービス「オーバー・ザ・トップ(OTT)」のコンテンツ制作費用に対して税額控除が認められ、水素製造用天然ガスに対する個別消費税減免制度が適用され、ハイブリッド車(HV)に対する個別消費税免除が2022年まで延長されるなど、内需活性化のための制度も多く新設された。


 政府の見直し案を見ると、新しい技術と経済環境の変化、コロナ事態、雇用問題など諸問題への取り組みを反映しているものとみられる。 経済回復、雇用増加が税法改正だけで成し遂げられるわけではないが、少しでも役に立つことを願う。


<筆者紹介>
信和会計法人は、2003年設立され、韓国進出を目指している企業、または進出済みの日本企業向けに、法人の設立に関するご相談及び設立代行、会計、税務、給与サービス、支給代行サービス、会計監査、デューデリジェンス(Due Diligence)サービス等を提供しております。大手会計法人の日本事業部出身のベテラン会計士を中心に設立され、豊富な経験とノウハウを活かし日系企業のクライアント様に最善のサービスを提供しております。
今回の担当:張太日(チャン・テイル)公認会計士(韓国)。英和会計法人(現在、Ernst&Young韓英会計法人)にて勤務。日本太田昭和監査法人(現在、新日本有限責任監査法人)にて派遣勤務。現在は信和会計法人の国際部代表。(TEL: 02-555-9211/E-mail: tichang@swacc.com)


<出典:NNA ASIA アジア経済ニュース、2021.9.9 https://www.nna.jp/>



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