韓国の税務・会計資料

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January 15, 2020
by swacc

海外派遣職員に対する税務問題


海外派遣職員に対する税務問題



 

最近は人件費の引上などにより海外に工場を設立して運営している会社が非常に増えている。このように海外に現地法人を設立して運営する場合、韓国からエンジニア、管理者、経営者等を派遣しなけれなならなく、これに伴い人件費と関連して税務問題も頻繁に発生している。海外派遣職員の多くは家族の健康保険等の問題で所属を国内法人に残して海外に赴任している。この場合、人件費と関連して誰が人件費を負担するかと個人所得税の申告はどこにするかが問題になる。

 

先ず、人件費の負担と関連して税法の関連規定を検討して見ると、海外派遣職員の人件費の負担は実際その派遣職員がどの業務を担当するかの基準によって負担するのが原則である。海外に滞在していても主に韓国の親会社の為の業務を遂行している場合には、その人件費は親会社の損金になる。反対に海外に滞在して主に海外の子会社の為に業務を遂行している場合には、その派遣職員に対する人件費を韓国で支払っても法人税法上は韓国の損金として認めて貰うのは難しくなる。しかし、その派遣職員が100%本社の為の業務を遂行しているとか100%子会社の為の業務を遂行しているとかするのは現実的ではない。それで、本社と子会社がその派遣職員の人件費を一定基準により分けて負担するケースが多いのが現実である。その人件費を配分する基準としては、本社と子会社の取引比率、その職員の勤務部署、担当業務などが考えられる。どの基準を使ってもその基準の妥当性を説明する客観的な証憑を準備する必要がある。基準の妥当性がないか或いは妥当性を説明する証拠がない場合には後日の税務調査時に困難に直面する可能性もある。

 

税務調査時に国内で支払った海外派遣職員の人件費が否認される場合には、税務上その人件費を業務と関連がない費用として否認する方法が多く使われている。又、別の否認方法としては、その人件費を海外の特殊関係者に無償で役務を提供していたと見做して通常の利益率を加算して本社の益金に加算する方法もある。しかし、通常の利益率を定めるのは難しいので会社の核心業務ではない支援業務の場合はOECDのガイドラインにより5%マークアップを適用するケースもある。

 

次は、その海外派遣職員の給与に対する個人所得税をどの国に申告するかの問題がある。所得税法施行令によると海外現地法人に派遣された職員は韓国の居住者と見なすと規定している。所得税法によると海外派遣職員は韓国の居住者になるので全世界所得を全部合算して韓国に申告しなければならない。しかし、その派遣職員が滞在している国と韓国の間で租税条約が締結されている場合は、国内法律より租税条約が優先されるので租税条約により居住国を判断しなければならない。従って、その海外派遣職員は租税条約による居住地国に全世界所得を合算申告し、海外で源泉徴収された所得税は租税条約と居住地国の所得税法に従って海外納付税額控除を受けるのが原則である。

 

以上は海外に職員を派遣する場合に多く発生する人件費の原則的な処理について検討して見た。しかし、実際適用に於いては各国との租税条約と当事国の国内法律により適用が異なるのを勘案して専門家と相談する必要がある。

 

 

 

<筆者紹介>

 

信和会計法人は、2003年設立され、韓国進出を目指している企業、または進出済みの日本企業向けに、法人の設立に関するご相談及び設立代行、会計、税務、給与サービス、支給代行サービス、会計監査、デューデリジェンス(Due Diligence)サービス等を提供しております。大手会計法人の日本事業部出身のベテラン会計士を中心に設立され、豊富な経験とノウハウを活かし日系企業のクライアント様に最善のサービスを提供しております。

 

今回の担当:張太日(チャン・テイル)公認会計士(韓国)。1963年生まれ。サンダーバード(Thunderbird)経営大学院でMBA取得。1989年~2003年に英和会計法人(現在、Ernst&Young韓英会計法人)にて勤務。1994年~1995年に日本太田昭和監査法人(現在、新日本有限責任監査法人)にて派遣勤務。現在は信和会計法人の国際部代表。(TEL: 02-555-9211/E-mail: tichang@swacc.com)

 


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