韓国の税務・会計資料

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September 18, 2019
by swacc

会計監査人の責任強化

会計監査人の責任強化

 

新外部監査法(株式会社等の外部監査に関する法律)の施行によって、会計監査市場で多くの変化が始まっている。上場企業は会計監査契約時に,6年間は自由に監査法人を選択して契約することができるが、その後の3年間は政府が指定する会計法人と監査契約を締結しなければならない。来月には6年以上同一監査人を選定してきたサムソン電子、SKハイニックスをはじめとする大規模の上場会社に対し、初めて新しい監査人が指定される。又、標準監査時間の制定、内部会計管理制度の監査義務化等の規定が新設された。このような制度の変化は会計監査の契約において会計監査人の地位を向上させ、又、会計監査に投入すべき監査時間の増加によって会計監査手数料の引き上げが予想される。中小上場法人の場合には国際会計基準によって会計処理をする能力が不足している場合が多く、このような場合、普通は監査担当法人に諮問を求めたり一部の会計処理を依存して国際基準による財務諸表の作成を完了する場合が多かった。しかし、こういった慣行的な処理は、新外部監査法の施行によって刑事処罰の対象になった。従って、国際会計基準による会計処理能力が不足している中小法人の場合には別途に財務諸表の作成のための会計法人を選定したり、会計専門家を増員する必要がある。

このような会計監査市場の環境変化は会計法人においては、業務拡大、収入増加等の望ましい側面もあるが、他方では増えた権限と利益に比例して責任も増加した。先ず、監査人登録制が施行される。即ち、会計法人の大型化、組織化を誘導し、一定規模以上の会計法人だけに登録会計法人という資格を与えて上場会社の会計監査ができるようにした。これによって既存の顧客を持っていた会計士の立場が弱くなり、青壮年の会計士を中心とした中小会計法人の間で合併が活発に行われている。又、会計法人の内部品質管理基準が強化され、故意、又は重過失によって監査人が監査基準を違反した場合、課徴金を賦課する罰則条項が新設された。このように関連規定違反時の罰則を強化すると同時に、公認会計士会でも自主的に公認会計士の外部監査行動綱領を制定して監査人が独立性を維持するために守るべき具体的な基準を設けた。これによると食事時は1回1人当たり3万ウォン以下、元旦とか中秋節では10万ウォン以下のプレゼント、現場監査時に提供される飲料、茶菓、監査出張時の食費、旅費等の実費精算等以外には金品を提供することができなくなった。監査契約期間中には職務関連者と一緒にゴルフ場、酒店等への出入が禁止され、現場の監査期間中には会社の職務関連者との夕食をはじめとする一切の遊興行為が禁止される。このような行動綱領の遵守のために会計法人では取締役の1人を行動綱領責任者に指定して監査人の行動綱領の遵守の程をモニタリングしなければならない。新しい会計監査環境は自由市場制度と市場規制の間で、会計監査という公共財の特性がある商品の適正価値を探す実験的な試みであると思われる。国際会計基準の定着においても時間がかかっているように、新しい監査制度も監査人と会社の両方において適応には多少の時間がかかるはずであり、試行錯誤も発生すると予想される。

 

 

 

<筆者紹介>

信和会計法人は、2003年設立され、韓国進出を目指している企業、または進出済みの日本企業向けに、法人の設立に関するご相談及び設立代行、会計、税務、給与サービス、支給代行サービス、会計監査、デューデリジェンス(Due Diligence)サービス等を提供しております。大手会計法人の日本事業部出身のベテラン会計士を中心に設立され、豊富な経験とノウハウを活かし日系企業のクライアント様に最善のサービスを提供しております。
 

今回の担当:張太日(チャン・テイル)公認会計士(韓国)。1963年生まれ。サンダーバード(Thunderbird)経営大学院でMBA取得。1989年~2003年に英和会計法人(現在、Ernst&Young韓英会計法人)にて勤務。1994年~1995年に日本太田昭和監査法人(現在、新日本有限責任監査法人)にて派遣勤務。現在は信和会計法人の国際部代表。(TEL: 02-555-9211/E-mail: tichang@swacc.com)



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