韓国の税務・会計資料

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January 26, 2018
by swacc

不正請託及び金品等授受の禁止に関する法律

国際透明性機構が2016年に発表した、2015年の韓国の腐敗認識指数は、170余ヵ国のうち37位を記録しており、過去10年間、依然として40位前後にとどまっています。これはチェコやスペインと同水準にあたり、隣国の日本(18位)、台湾(30位)よりはるかに低い水準です。世界の腐敗度ランキングとは別に、韓国の国民は公務員らの腐敗に対し、非常に悲観的な見方を示しています。昨年3月に「不正請託及び金品等授受の禁止に関する法律」(いわゆるキム・ヨンラン法)が国会を通過した際、多くの国民が歓迎し、韓国社会に蔓延する腐敗がようやく根絶できるものと期待する一方、過剰立法の問題や政府による私的自治原則の侵害等に関する議論が行われたのも事実です。実際に同法は、期待感に満ちている大多数の一般国民より、韓国国内で活動している企業にさらに大きな影響を及ぼすものと予想されます。つきましては、同法が施行される前に、同法への理解を深めるとともに、今後の企業活動にあたっての留意点などについて考えてみることにします。

 

「不正請託及び金品等授受の禁止に関する法律」は、公職者らの金品授受や請託行為を禁じるために、2015年3月に国会を通過したもので、1年半の猶予期間を経て、2016年9月28日より施行される予定です。現行刑法や特定犯罪加重処罰法にも、不正請託および金品授受等を処罰する規定はあるものの、職務関連性や対価性を立証しなければならず、禁止行為に対する予防の実効性や処罰の度合いについて疑問視されてきました。これを受けて金品授受の場合、職務関連性や対価性がなくても処罰することができるよう、新たに本法を制定したわけです。

適用対象は公職者のみならず、教職員(私立学校を含む)やメディア関係者、そしてその配偶者まで、広範囲にわたっています。また、授受を禁じている金品に、一切の財産的利益や飲食・酒類・ゴルフなどの供応接待、交通や宿泊などの便宜の提供、債務免除、就業の提供、利権の付与、その他の有形無形の経済的利益まで含めており、非常に広範囲かつ包括的です。

職務関係の有無に関わらず制裁の限度額は、同一人から1回に100万ウォンまたは会計年度ごとに300万ウォンであり、限度額を超える金品などを授受、要求または授受する約束をする場合、受領者、提供者いずれも、職務関連性やその名目に関係なく、3年以下の懲役または3千万ウォン以下の罰金に処することになっています。万が一、対価性はないものの職務関連性が認められれば、上記限度額以下であっても、受け取った金品の価額の2倍以上5倍以下に相当する金額の過料が科されます。また、企業の役職員が金品の提供などの違法行為を行った場合、その違法行為を防止するために相当の注意や監督を尽したことが認められなければ、当該企業も罰金または過料に処されることになります。

但し、円滑な職務遂行や社交または扶助の目的として提供される飲食、贈り物、 慶弔費などは許容されており、その限度額は飲食3万ウォン、贈り物5万ウォン、そして慶弔費10万ウォンなどとなっています。

キム・ヨンラン法の成立によって、多くの企業が対外的な業務に影響を受けるものと予想される中、対外的な業務や広報活動の実施において、人間関係志向から職務中心のタスク志向への切り替えが求められると考えられます。したがって、公務員やメディア関係者が望むコンテンツ中心の対外的な業務を展開する必要があり、例えば、比較的に請託行為とは程遠い研究所や学会などを活用して、セミナーや懇談会を開催するなど、公職者らとのコミュニケーションを図るといった、新たな対外的業務を開発していく必要があるといえましょう。

 

同法の施行日は2016年9月28日ですが、法施行初期段階において、飲食業や百貨店、ゴルフ場、ホテルなどの売り上げにマイナス影響が予想されており、実際に飲食業や農業・水産業などに従事する多くの人が、経済的理由から同法の施行に反対しています。その他にも、対象範囲があまりに広すぎることや、配偶者の金品等の授受まで報告を義務付けており、良心の自由を侵害する恐れがあること、不正請託の概念が曖昧なため、検察による恣意的な法適用への懸念から、憲法裁判所に憲法訴願審判請求を行うなど、反対意見が多く、施行前に改正される可能性も排除できないでしょう。

 

以上、9月施行予定の「不正請託及び金品等授受の禁止に関する法律」における適用対象および制裁基準について、すでに公布された法律を中心に調べてみました。前述したように、当該法は改正の可能性があるため、改正の際は、改めて情報を更新させていただきます。

 

 

 

 

 

 

筆者紹介

信和会計法人は、2003年に設立され、韓国進出を目指していたり、既に進出している日本企業向けに、法人の設立に関するご相談および設立代行、会計、税務、給与サービス、支給代行サービス、会計監査、デューデリジェンス(Due Diligence)サービス等を提供しております。大手会計法人の日本事業部におけるベテラン会計士を中心として設立され、豊富な経験とノウハウを活かし、日本企業のクライアント様に最善のサービスを提供しております。

 

今回の担当: 張太日(チャン・テイル)公認会計士(韓国)。1963年生まれ。サンダーバード(Thunderbird)経営大学院(MBA)。1989年~2003年に英和会計法人(現在、Ernst&Young韓英会計法人)にて勤務。1994年~1995年に日本太田昭和監査法人(現在、新日本有限責任監査法人)に派遣勤務。現在は、信和会計法人の国際部代表。

 


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