韓国の税務・会計資料

韓国の税務・会計資料

  • > home - 韓国の税務・会計資料

January 26, 2018
by swacc

韓国における税務調査の手順

における税務調査の手順

 


韓国においてビジネスをしている企業が最も恐れている分野の一つはおそらく韓国の租税制度、特に税務調査及びその過程だと思います。しかし、韓国の租税制度は租税法律主義に基づいており、税務調査の手順は国税基本法第7章の2(納税者の権利)で定められているため、会社の経営者や実務者が韓国の税務調査制度及び手順について、ある程度知識さえ持っていればそれほど懸念することではないと思います。よって、今回は韓国の税務調査制度及び手順等全体の流れについて簡単にまとめてみたいと思います。

 

まず、税務調査の対象選定についてです。税務調査の対象者選定は定期選定と随時選定の二つに分けて行われていますが、対象者の選定は国税基本法第81条の6(税務調査の管轄及び対象者選定)に基づいています。

定期選定では電算システムを利用して分析を行い、申告内容の誠実度が低い下位者の中で規模の大きい事業者を選定、無作為抽出方式による標本調査及び過去の課税期間中の税務調査経験の有無などを総合的に考慮し、対象者を選定します。また、所得や伸び率が業種別平均値より低い会社や他の業種に比べ実際の所得対比申告所得率が低い業種は税務調査の対象となる可能性が高くなります。従って、税務調査の対象になる恐れがある類型としては、所得に比べ支出が遥かに多い会社や高価な消費財会社、長期間調査の対象にならなかった会社となります。ところが、中小製造メーカーや輸出関連会社、ベンチャー企業、またクレジットカードの発行比率や売り上げ及び所得の伸び率の高い会社は、比較的税務調査の対象となる可能性が低いと言えます。

一方、随時選定では申告漏れや無資料取引、偽装‧架空の取引の疑いがある場合や申告内容から明白な疑いが認められる資料及び課税当局が具体的な脱税情報を入手した場合は調査対象となります。ただし、無資料取引や偽装‧架空の取引等取引の内容が事実と異なる疑いがあるという理由により税務調査の対象として選定するためには、課税当局がそれに関して具体的に証明しなければならないという面で定期選定とは区別されると言えます。それに、申告内容に脱漏や誤謬の疑いを認定するに足る明白な資料がある場合に該当するかどうかに対して、納税者の行為とは関係なく課税当局は明白な資料が存在することを証明できなければ税務調査の対象として選定することはできなくなります。

 

一応税務調査の対象企業に選定されると、税務調査を開始する十日前までに課税当局から「税務調査事前通知書」が送られます。ただし、脱税情報提供の通報に基づいた調査など事前通知により証拠隠滅の恐れがあると認められる等一定の事由がある場合は事前通知を省くこともできます。

「税務調査事前通知書」には、調査対象の姓名や住所などの詳細や調査対象となる年度及び調査税目、調査官の姓名や所属部署等が記載されています。その内容をよく見ると今後行われる調査の方向が大体わかります。通常の税務調査は、全ての税金に対し統合調査の方式で行われます。つまり、特定税目に限り調査するのではなく検討を行った後、問題となった税目は漏れなく追徴することを意味します。

 

調査が開始されると事業者が税務署に申告した内容を基に、該当企業に対する課税資料(税金計算書の合計と符合しない資料、資料上廃業者等との取引資料等)や取引証明に対する調査が行なわれ、必要と判断した場合は金融取引の内訳や取引先に対する調査も行われます。税務調査が行われる期間は法律では定められていませんが、場合によっては調査期間が数週間から数ヶ月までかかります。通常の中小企業に対する定期調査では4~6週間ぐらいかかるのが普通です。ただし、調査担当者が調査期間が足りないと判断した場合は調査期間を延長することもできます。

 

最後に、税務調査の終了後調査結果に対し異議がある場合は、処分を下した税務官署に対し課税前適否審査の請求若しくは異議申し立てをすることができます。また、国税庁に対する審査請求や租税審判院に対する審判請求、監査院に対する審査請求など不服申し立てをすることもできますが、もしここでも権利救済ができなかった場合は行政裁判所に訴訟を起こすこともできます。

 

最近の税務行政の特徴の一つとして書面分析の強化を挙げられますが、これは現政権が掲げた「地下経済の陽性化」及び「増税なき福祉財源確保」から始まったと思われます。一見不要な税務調査の対象選定を避けるための方策のように見えますが、課税当局が中小企業に対する税務調査の猶予を掲げる一方で、一層厳しい書面分析に乗り出しかねないとも思われます。

 

<筆者紹介>

信和会計法人は、2003年に設立され、韓国進出を目指している企業、または進出済みの日本企業向けに、法人の設立に関するご相談および設立代行、会計、税務、給与サービス、支給代行サービス、会計監査、デューデリジェンス(Due Diligence)サービス等を提供しております。大手会計法人の日本事業部出身のベテラン会計士を中心に設立され、豊富な経験とノウハウを活かし、日本企業のクライアント様に最善のサービスを提供しております。

 

今回の担当: 張太日(チャン・テイル)公認会計士(韓国)。1963年生まれ。サンダーバード(Thunderbird)経営大学院(MBA)。1989年~2003年に英和会計法人(現在、Ernst&Young韓英会計法人)にて勤務。1994年~1995年に日本太田昭和監査法人(現在、新日本有限責任監査法人)に派遣勤務。現在は、信和会計法人の国際部代表。

 


  • List