韓国の税務・会計資料

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January 19, 2018
by swacc

特殊関係者間の取引における留意事項

特殊係者間の取引における留意事

韓国の税法には、「不当行為計算の否認」という規定があります。これは特殊な関係にある者との取引によって租税の負担を不当に減少させる結果となると認められる時は、事業者の行為又は会計処理が法律や企業会計基準に照らし合わせ誤りがない場合であっても、これを否認し税法に基づいて所得金額を計算することを言います。

 

不当行為計算に該当する場合は、時価との差額を所得金額に加算します。ここで言う「時価」とは、当該取引と類似した状況で、特殊関係者以外の不特定多数と継続的に取り引きしてきた価格、又は特殊関係者ではない第三者間で一般に取引される価格のことです。

 

特殊係者の範

まず、特殊関係者の範囲をご説明します。韓国の税法における特殊関係者とは、親戚又は株主や事業主等の特殊の関係がある者を言います。このような特殊関係者間の取引においては、一般に行われる第三者との取引に比べ所得隠しや脱漏など税金逃れの恐れがあるため、課税当局は関係法令の制定や税務調査などを通じ未然防止及び摘発に力を入れています。

次は、法人税法で具体的に示している特殊関係者の範囲の中、重要な項目をまとめたものです。

1. 役員任免権の行使や事業方針の決定など当該法人の経営において、事実上影響力を行使していると認められる者とその親族

 

2. 株主など(小口株主などを除く)とその親族

 

3. 法人の役員ㆍ使用人又は株主などの使用人

 

4. 当該法人が直接的に又は上記1、2、3に掲げる関係にある者を通じて、ある法人の経営において支配的な影響力を行使している場合、その法人

 

5. 当該法人に対し100分の30以上を出資している法人に、100分の30以上を出資している法人又は個人


租税の負担を不当に減少させる結果となると認められる場合

次は、法人税法に掲げられている「租税の負担を不当に減少させる結果となると認められる場合」に該当する項目の中、重要な事項をまとめたものです。

 

1. 資産を時価より高い価額で購入又は現物出資を受けたり、若しくはその資産の減価償却を過大計上した場合

2. 収益を生み出すことのできない無収益資産の購入又は現物出資を受けたり、若しくはその資産に対する費用を負担した場合

3. 資産を無償又は時価より低い価額で譲渡したり、現物出資を行った場合

 

4. 特殊関係者である法人との合併(分割合併を含む)ㆍ分割において、不公正な割合で合併ㆍ分割を行い、それにより譲渡損益を減少させた場合

 

5. 不良資産の借り換え又は不良債権を譲り受けた場合

 

6. 出捐金を代わりに負担した場合

 

7. 金銭、その他の資産又は用役を無償若しくは時価より低い利回りㆍ料率や賃貸料で貸し付けたり提供した場合。ただし、株主等や出捐者ではない役員(小口株主などの役員を含む)及び使用人に社宅や借り上げ社宅を提供する場合は除く

 

8. 金銭、その他の資産又は用役を時価より高い利回りㆍ料率や賃借料で借り受けたり、提供を受けた場合


上記の7番及び8番に該当する金銭の貸し出しや借り入れにおいては、前述した時価の定義(特殊関係者ではない第三者間で一般に取引する価格)にもかかわらず、借入金に対する加重平均利率や法律で定める4.6%を時価と見なすので、役職員等と資金取引を行う際は気をつける必要があります。特に、会社の財務諸表上には仮払金などを残さないよう心がけましょう。

 

 

 

また、時価との差は全て不当行為によって否認されるのではなく、時価と取引金額の差額が3億ウォン以上であるか、又は時価の5%に相当する金額以上である場合に限ります。

 

 

 

以上で特殊関係者間の取引における留意事項をまとめてみました。韓国に進出した外国企業は、特に本社やその他関係会社との取引が多く「不当行為計算の否認」規定に反する恐れがあるため、特殊関係者との取引においてはさらに注意する必要があります。

 

 

 

<筆者紹介>

 

信和会計法人は、2003年に設立され、韓国進出を目指している企業、または進出済みの日本企業向けに、法人の設立に関するご相談及び設立代行、会計、税務、給与サービス、支給代行サービス、会計監査、デューデリジェンス(Due Diligence)サービス等を提供しております。大手会計法人の日本事業部出身のベテラン会計士を中心に設立され、豊富な経験とノウハウを活かし日本企業のクライアント様に最善のサービスを提供しております。

 

今回の担当: 張太日(チャン・テイル)公認会計士(韓国)。1963年生まれ。サンダーバード(Thunderbird)経営大学院でMBA取得。1989年~2003年に英和会計法人(現在、Ernst&Young韓英会計法人)にて勤務。1994年~1995年に日本太田昭和監査法人(現在、新日本有限責任監査法人)にて派遣勤務。現在は信和会計法人の国際部代表。(TEL: 02-555-9211/E-mail: tichang@swacc.com)



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