韓国の税務・会計資料

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January 19, 2018
by swacc

2017年税制改正(国際租税)

2017年税制改正(国際租税)

 


2016年12月2日に、2017年税制改正法案が国会を通過しました。国際租税に関連する主な変更内容として、多国籍企業の国別報告書(CbCR)の提出義務の追加や多国籍企業の個別企業報告書(ローカルファイル)及び統合企業報告書(マスターファイル)の提出制度の見直し、国外転出をする場合の譲渡所得の特例の新設、そして居住者が非居住者に海外預金等を贈与する場合の課税方法の変更等が挙げられます。今回は、2017年税制改正法案における外国法人及び外国人に係る内容を取りまとめました。




多国籍企業の国別報告書の提出義務




OECDは多国籍企業の課税逃れを防ぐため、国際取引に関する資料の提出義務を強化する勧告を策定しています。これを受けて韓国政府は、国際租税調整に関する法律(以下「国租法」)第11条を改正し、国際取引統合報告書の提出範囲に国別報告書を新たに追加しました。多国籍企業の最終親会社にあたる内国法人であり、かつ直前事業年度の連結財務諸表の売上高が1兆ウォンを超える企業を対象に、多国籍企業の親会社に作成義務がない場合、または国別報告書の交換が行われない国に所在する等の場合、多国籍企業の国内子会社または国内支店に対して国別報告書の提出義務が課されました。国別の所得や税金等の配分内訳及び居住法人のリスト等を記載し、親会社の事業年度終了後1年以内に提出しなければなりません。




多国籍企業の国別報告書及び統合企業報告書の提出制度の見直し




改正された国租法では、正常価格事前承認の提出書類と個別企業報告書の内容が類似していることを勘案し、また納税者の申告の便宜を図る狙いで、個別企業報告書及び統合企業報告書の提出方法を見直しました。さらに、正常価格事前承認を受けた取り引きに対して、個別企業報告書の提出義務が免除されており、報告書の提出期限は法人税の申告期限から、事業年度終了後1年以内に延長となります。




国外転出をする場合の譲渡所得の特例の新設




国際的租税回避の防止及び国内財産に対する課税権を確保するために、出国の日前10年以内において、国内に住所または居所を5年以上有する大株主が、海外移住等の理由で非居住者となった場合、国外転出の日に国内株式の譲渡があったものとみなし、譲渡所得税が課されます。一方、外国税額控除を受けることができるとともに、株式の譲渡価額が出国の時の価額よりも下落している場合は、税額控除を受けることができます。なお、出国日が属する月の末日から3ヶ月以内に、申告・納付する必要があります。担保提供及び納税管理人の選任等の要件を満すと、5年間、納税猶予が認められることになり、5年以内に再転入等により居住者となれば還付されます。同規定は2018年1月1日以降の居住者の出国について適用されます。




海外預金等を贈与する場合の課税方法の変更




改正された相続税及び贈与税法第4条の2ならびに国租法第21条は、居住者が非居住者へ贈与した国外財産に対する課税の効率性を高める目的で、海外預金等を贈与する時の課税方法を、受贈者(非居住者)の取得行為に対し課税する方式から、贈与者(居住者)の贈与行為に対し課税する方式に変更しました。




その他




改正された法人税法では、内国法人との課税上のバランスを考慮して、外国法人に対する繰越欠損金の控除限度額を、その事業年度の所得金額の80%に設定しました。




租税特例制限法第18条の2においては、外国高度人材受入のため、外国人労働者に対する課税特例について、当初2016年12月31日までとしていた適用期限を2018年12月31日まで延長する一方、国内労働者との課税上のバランスを勘案して、特例税率を17%から19%に引き上げることにしました。




非居住者及び外国法人の権利保護を強化する目的で、非居住者及び外国法人が租税条約上の制限税率等の適用を受けられない場合は、源泉徴収日が属する月の末日から3年以内だった更正の請求期間を、5年以内へ拡大しています。




上記税制改正は、国際取引に係わる主な内容を抜粋したものであり、その他については税制または税制改正に詳しい専門家にご相談ください。とりわけ、多国籍企業の国別報告書については、関連法規を充分に熟知して、予め備えておく必要があると考えられます。




筆者紹介




信和会計法人は、2003年に設立され、韓国進出を目指していたり、既に進出している日本企業向けに、法人の設立に関するご相談および設立代行、会計、税務、給与サービス、支給代行サービス、会計監査、デューデリジェンス(Due Diligence)サービス等を提供しております。大手会計法人の日本事業部におけるベテラン会計士を中心として設立され、豊富な経験とノウハウを活かし、日本企業のクライアント様に最善のサービスを提供しております。




今回の担当: 張太日(チャン・テイル)公認会計士(韓国)。1963年生まれ。サンダーバード(Thunderbird)経営大学院(MBA)取得。1989年~2003年に英和会計法人(現在、Ernst&Young韓英会計法人)にて勤務。1994年~1995年に日本太田昭和監査法人(現在、新日本有限責任監査法人)に派遣勤務。現在は、信和会計法人の国際部代表。E-mail : chang@swacc.com



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