韓国の税務・会計資料

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December 04, 2020
by swacc

上場会社の会計不正事例

上場会社の会計不正事例
 


 韓国の金融監督院は9月22 日、上場会社の違反事例を集めた資料「不正会計予防のためのCheckPoint」を配布した。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で売り上げの減少や営業損失などで苦しんでいる企業の中で、上場維持、資金誘致などの目的のために架空の売り上げを計上するなどの誘惑にかられる限界企業が出てくるかもしれない。証券市場の最近の過熱ぶりは、企業の業績と乖離(かいり)しているという指摘もある。新しい投資家たちも次々と誕生しているようだが、いつかは株式市場は落ち着き、株価も下落するだろう。そうなれば不正会計を働いた限界企業は大きな衝撃を受けるはずだ。 金融監督院が発表した不正会計の事例は、既存の投資家だけでなく新規投資家にも参考になると考えられ、簡単に紹介したい。


 企業が新製品を最初に販売する際、「最初に生産した分は全て売れた」とか、「小売り業者に大量に卸した」といった具合にマスコミに報道資料を配布することが多いが、実はモノの移動がないケースがあるので注意が必要だ。


 しかし、一般投資家の立場からはその実態は見えにくいため、内部・外部の監査報告書を注意深く見なければならないだろう。新興企業向け株式市場コスダックに上場している会社の場合、4年連続して個別財務諸表上で営業損失が発生すれば「管理銘柄」に指定されるので、個別財務諸表の営業損益を操作する誘惑にかられがちだ。


 金融監督院が発表した事例としては、◇数年間営業損失である会社が新規取引先への売り上げが発生し、個別財務諸表上、営業黒字に転換した法人◇新事業を推進するという名目で、本社社員を従属会社に書類上発令し従属会社の人件費で処理した法人◇連結財務諸表は営業赤字だが、個別財務諸表は黒字の法人◇個別財務諸表上で巨額の当期純損失が発生したにもかかわらず、営業損益は黒字の法人――などがある。 これに対して投資家の立場では、個別財務諸表上、妥当な根拠もなく営業損益が黒字に転換されるなど不正会計の兆候があると判断される場合、投資に慎重を期す必要がある。


 内部統制上の問題点もあり得る。会社資金が財務担当役員など個人の口座に入金されたり、一部の取引で売上増加額より売上債権増加額が多かったり、長期間会計業務と資金業務を分離せずに同一人物が遂行したりするケースなどが金融監督院が発表した事例だ。


 個別投資家の立場では、内部統制の適正性について、内部会計管理制度運営報告書、内部会計管理制度検討(または監査)意見などに関心を持つ必要がある。 また、◇会社の筆頭株主や代表取締役が頻繁に変更◇私募の有償増資、新株予約権付社債(転換社債=CB)を頻繁に発行◇資金調達後の貸付金、前払金などの規模が大幅に増加◇代表取締役が特定の銀行口座を単独管理して会社資金を任意で使用◇取締役会の議事録に捺印する取締役·監査役の印鑑を代表取締役が管理◇――などの場合も会計不正の蓋然(がいぜん)性が高い事例として発表された。


 しかし、不正会計に対する罰則も最近大幅に強化された。故意の会計基準違反が摘発された場合、会社などに大規模な課徴金が課される可能性があり、同不正会計に関与した会社関係者全員にも課徴金を課すことができる。すなわち、会社には違反金額の20%、監査人には監査報酬の5倍まで課徴金を課することが可能であるほか、検察告発・通報などの措置も可能である。


 また、会社の故意的な会計基準違反の場合は、役員および監査(監査委員)に対する解任勧告もできると同時に職務停止(6月以内)の併科も可能である。 監査法人の義務も強化された。 監査人は、会社の不正会計について合理的な疑いがある場合、監査(または監査委員会)に通知し、必要に応じて外部の専門家による調査を実施する。 監査人および監査役(または監査委員会)は、取締役の職務遂行に関する不正行為または重大な法令・定款の違反事実を発見した際、速やかに相互共有し、株主総会および証券先物委員会に報告するようになっている。


 このように不正会計に対する監督と罰則が強化されたとしても、投資した会社に対する会計健全性については投資家本人が関心を持ち、ニュースや各種報告書に注意を払わなければならない。


 以上簡単に不正会計と関連した金融監督院の最近の発表を調べてみた。 株価バブルという専門家の評価がある中で、投資家はさらに注意しなければならない。 
 


<筆者紹介>
信和会計法人は、2003年設立され、韓国進出を目指している企業、または進出済みの日本企業向けに、法人の設立に関するご相談及び設立代行、会計、税務、給与サービス、支給代行サービス、会計監査、デューデリジェンス(Due Diligence)サービス等を提供しております。大手会計法人の日本事業部出身のベテラン会計士を中心に設立され、豊富な経験とノウハウを活かし日系企業のクライアント様に最善のサービスを提供しております。
今回の担当:張太日(チャン・テイル)公認会計士(韓国)。1963年生まれ。サンダーバード(Thunderbird)経営大学院でMBA取得。1989年~2003年に英和会計法人(現在、Ernst&Young韓英会計法人)にて勤務。1994年~1995年に日本太田昭和監査法人(現在、新日本有限責任監査法人)にて派遣勤務。現在は信和会計法人の国際部代表。(TEL: 02-555-9211/E-mail: tichang@swacc.com


<出典:NNA ASIA アジア経済ニュース、2020.10. https://www.nna.jp/>



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